耕作放棄地を再利用し、機械で人手不足を解消。ぶどう農園『MKファーム こぶし』

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農機販売会社、ぶどう栽培に踏み出す。

ワインをはじめ、さまざまな名産品に恵まれる花巻市だが、農業における高齢化と後継者不足は、継続して取り組むべき課題だ。農水省の調査によると、花巻市全体の農家の数は、平成22年から平成27年の5年間で約1,000人以上も減少。
ぶどう農家も例に漏れず、その栽培面積はピーク時の3分の1程度まで減少しているという。これらの問題を解決のためには、若い新規就農者を増やすこと、また、農業ICTなど機械で農作業の効率化を目指すことが不可欠になってくる。
こうしたなか、花巻市の農業の現状において希望の光となるのが、トラクターなど農業機械の販売をメイン事業とする「みちのくクボタ」が運営する、ワイン専用のぶどう農園『MKファームこぶし』だ。
設立は2017年の8月とまだ若いが、クボタグループの強みでもある農業機械を活用し、少人数でもヘクタール単位の農園でのぶどう栽培を実現させている。農園設立の経緯や、機械でのぶどう栽培について、農園を運営している菊池さんと、スタッフの堰根さんにお話を伺った。

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森のような場所から、ぶどう園へ。

MKファームの設立は、大迫町にある「葡萄が丘農業研究所」から誘いを受けたことがきっかけとなる。高齢化や後継者不足で衰退が懸念されぶどう生産への参入を決めたMKファームは、大迫町の亀ケ森に約1ヘクタールの畑を造成した。
「畑は、あえて耕作放棄地を選んで再利用しているんです。」畑づくりについて、菊池さんは語る。
耕作放棄地とは、以前耕地であったもので、過去1年以上作物を栽培せず、この数年の間に再び耕作する考えがないとされている土地のことだ。
「山を崩して畑を作る方が簡単だけど、『再利用』というのを大事にしたいというのと、景観をよりよくしたくて。とはいえ、初めて耕作放棄地を案内してもらったときは、あまりの荒れ具合に心が折れそうでした(笑)」
開墾には業者を使わず、農機具とスタッフを総動員。もともとは田んぼだったという情報だけを頼りに、地道に作業を進めていったという。設立の年に1ヘクタール、その次の年に1ヘクタールと畑を広げていったMKファーム。うちひとつの畑は、粘度が強く水はけが悪かった。
こうした土壌にも対応できるのが機械化農業で、垣根の幅を広くとることで、配水の機械を導入しているのだそうだ。 開墾と植樹を2年前に行ったため、ぶどうの木はまだ成長しきっておらず、初収穫は再来年ごろになるのだとか。
ぶどうの木は、植樹から年月が立つほどに味に深みが増すようで、今後のぶどうの成長が楽しみだ。

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株式会社MKファームこぶし| 菊池 啓悦 様、堰根 慶 様

機械をどこまで活かせるか、試行錯誤のぶどう栽培。

これからどんどん育っていくであろうぶどうの栽培について、現在は機械を活用しながら、肥料や土壌づくりを試行錯誤しているという、スタッフの堰根さん。
「ぶどうそのものを味わってもらう食用ぶどうの場合は、人の手でしっかりこだわり抜くことが多いと思いますが、我々が育てるワイン専用のぶどうなら、その栽培過程に、機械で効率化できる余地があると考えています。」と、機械導入についての意気込みを語ってくれた。機械の活用は、例えばビニールの要否。
大迫では、ぶどうにビニールをかけるのが一般的なのだそうだが、MKファームこぶしでは、一部のぶどうにビニールをかけない露地栽培にトライしている。畑に機械を導入する場合、高さに制限がないほうが作業効率は上がる。
ただ、ビニールはぶどうの品質を保つという説もあるため、植樹したてのうちに両者の差を比べ、今後の栽培に活かしていきたいのだそう。
MKファームではこのほか、よい土壌をつくるための工夫にも積極的だ。
ツヴァイゲルトレーベという品種の畑では、剪定した枝を焼却してつくった炭を土に撒いているという。灰にならないようしっかりと水をかけて炭にし、もとあった畑へ。この炭の力によって、透水性、つまり水はけをよくすることが期待できるのだとか。ぶどう農園としての歴史は新しいが、それゆえに大きなポテンシャルを秘めているMKファームこぶし。
「手間はかかりますが、今のうちに経験を重ねていきたいですね」と堰根さん。
機械導入の可能性と、今後のぶどうの収穫に期待がふくらむ。

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機械導入を花巻の農家へ。

果樹栽培において、負担の大きな作業の一つである薬剤散布。MKファームこぶしは、機械を使った薬剤散布も得意分野だ。 今年からの新たな取り組みとして、新規就農者や、人手が足りず薬剤散布ができない人の作業を請け負い、機械で薬剤を散布するサポートを始めた。
「農園によっては旋回スペースがなかったり、通路が狭かったりといろいろ大変ですが、収穫できるまでは責任を持っておこなっていきます。」と語る菊池さん。
新規就農者がぶどう栽培をはじめやすい環境を整える策として、こうした機械によるサポートは、ぶどう栽培という農業の間口を広げるきっかけとなるだろう。
人手不足が避けられない状況のなか、MKファームこぶしがこの業界の一助となることを期待したい。
MKファームが委託醸造してつくったワインは、市内ワイナリーほか、ワインイベント等で購入可能。ワインと一緒に、リアルタイムな栽培秘話も聞くことができるかも。