養豚という畜産業の、本質を忘れない。
花巻が誇る名品、白金豚の作り手「高原精麦」

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手をかけて育てる、最高品質のブランド

花巻市の名産品は?と聞かれたなら、その答えに「白金豚」は欠かせない。
プラチナポークとも呼ばれる白金豚は、花巻に拠点を置く高原精麦株式会社が、飼育から生産加工まで一貫体制でおこなっている、最高級銘柄の豚肉だ。脂の乗りと柔らかい肉質、まろやかな味わいが特徴で、旨味がぎゅっと凝縮された脂身は、ふだん脂身を好んで食べない人も、白金豚なら食べられると言わしめるほどだとか。
白金豚は、日本では珍しいLWBという品種。純粋品種のランドレース(L)、大ヨークシャー(W)、黒豚とも呼ばれるバークシャー(B)をかけ合わせた雑種である。日本で多く飼育されているLWD種と比べると、飼育に時間がかかるなど生産効率の点で劣る部分があるLWB種。そんな品種を、高原精麦はいかにして高級ブランド「白金豚」へと育て上げたのか。社長の高橋さんにお話を伺った。

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110年間築いてきた、畜産とのつながりと敬意。

高原精麦は、来年で創業110年を迎える歴史の長い会社だ。
明治43年、米穀販売の会社としての創業から、農機具販売、大麦の生産と事業を分化させ、昭和にかけて家畜の餌の生産へと変化していったという。白金豚というブランドのはじまりは1997年から。家畜の飼料生産と養豚を主力事業としていた高原精麦は、当時のバブル崩壊を機に事業転換を決意。「金融機関が破綻していくいま、ただ地域の人に豚肉を届けるだけでは立ち行かなくなるかもしれない」との考えから、きちんとコンセプトを立てて、銘柄豚の生産を始めたのだそうだ。そんな始まりから、いまや全国のひとびとから愛されるまでに育った白金豚。銘柄の由来を尋ねると、素敵な答えが返ってきた。
「宮沢賢治さんの作品からお借りした名前なんです。」
誰もがその名を知る児童作家、宮沢賢治は、ここ花巻の生まれだ。詩人、作家として知られているが、生前は農学校の教師として、花巻で教鞭をとっていたといわれている。そんな宮沢賢治の作品のひとつ『フランドン農学校の豚』から、白金豚という名前が生まれたという。「豚の目線から描かれた物語で、そのなかにこんな文章があります。『水やスリッパや藁を食べて、それをいちばん上等な、脂肪や肉にこしらえる。豚のからだはまあたとえば生きた一つの触媒だ。白金とおなじことなのだ。』畜産は食べ物を生まれ変わらせる行為だという、作者の畜産への真摯な観察眼に共感したことから、白金豚いう名前がつきました。」と話す高橋さん。日本に名を轟かせるブランドにふさわしい由来である。

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高源精麦株式会社 | 高橋 誠 様

養豚の歴史も、畜産を支える農業も、大切にしたい。

白金豚の食事と育て方に関して、高橋さんは「本質的に大切なことを守り続けている」という。
「彼らの食事は、穀物ととうもろこし。特に変わった食材は与えていませんが、穀物はかならず遺伝子組換えでないもの、とうもろこしは国産のものを取り入れてます。」たとえ遺伝子組換えの食材に直接的な悪影響がないとしても、自然な食事を選ぶことで、昔ながらの自然な養豚を守っていきたいという理由からだそう。
また、とうもろこしの国産へのこだわりは、飼料としての優秀さと、日本の農業を見据えてのことなのだとか。
「少し前、日本で銘柄豚ブームが起きた頃の豚のおいしさを、僕はいまでも覚えていて。あのおいしさを支えていたのが、紛れもなくとうもろこしなんです。いまは飼料米を与える農家も多いですが、お米は美味しすぎるあまり身質が淡白になってしまうような…。だからもう少し旨味を出すというか、獣臭さとのギリギリのバランスを保つためには、穀物の香りに、力強さが必要だと考えています。」と高橋さん。
餌に使用するとうもろこしは、米農家の協力をあおぎ、水田を転作して生産したものだ。穀物の国内自給率の向上、耕作放棄地の解消、さらに、米離れや多額の税金で苦労の多い米農家の方々の新しい道として、とうもろこしの生産を普及させたいという。「畜産家が米農家から穀物を買い、消費者に売る。日本の農業に、新しいお金の循環をつくりたいと思い、取り組みを進めています。」日本の食を支える生産者としての責任感が窺える。さらに、高原精麦のもうひとつのこだわりが、じっくりと育てるということ。ほかの養豚農家よりも、飼育期間は20日ほど長くとっているという。
「昔と比べて、いまの養豚農家の平均飼育期間は20日ほど短くなっているようです。それでも安くて美味しい豚肉ができるのは品種改良の賜物でもあるのですが。わたしたちはブランド豚の生産者として、いいものをじっくりと作っていきたいと考えています。」

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水の恩恵は、花巻での飼育ならでは。

花巻という自然環境と白金豚との関係性について、高橋さんは「水質の良さ」をあげている。
高源精麦は西と東に3つの農場があり、西側の農場は奥羽山系、東側は北上山系の水を使っているという。
西の農場では、地下深くにたまった奥羽山脈の雪解け水と、釜石市の磁鉄鉱と石灰の組み合わせでできる岩手産の特別なミネラルウォーターを使用。対して東の農場で使われる水には、北上山系の太古の地層を介して、ミネラル分がたっぷり含まれている。花巻の西と東、それぞれで採れる贅沢な水も、白金豚の上品な味わいを引き立たせているのだろう。
養豚開始からブランドを守り抜く白金豚、いったいどんな味わいなのか、気になる方もおおいのでは。
白金豚は、原則として飲食店のみに販売をおこなっており、直営店である「レストランポパイ(洋食レストラン)」ほか、関連店舗の源喜屋、花巻温泉郷の多くの宿で食べることができる。また上記店舗以外にも、料理に白金豚を使用している飲食は全国にあるため、ぜひ店舗を調べて足を運んでみてほしい。