いつかは花巻で、自分のワイナリーを。自家醸造を目指すぶどう農家「大迫佐藤葡萄園」

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クマのボトルが印象的な、新星ワイン。

いつもとは違うワインを飲んでみたいとき、とにかくいろんなワインを試してみたいとき、みなさんはどんな基準でワインを選ぶだろうか。辛口か、甘口か。酸味の強さか、渋みの深さか。どれを選ぼうか迷ったときには、棚に並ぶボトルを眺めて、ピンときたものを買ってみる、いわゆる「ジャケ買い」をしてみるのも、方法のひとつかもしれない。
今回ご紹介するのは、クマのイラストが印象的な愛らしいボトルのワインを販売している、大迫佐藤葡萄園。
今年初号ワインを発売したばかりのニューフェイスだ。
農園は、花巻市出身の佐藤直人さんがひとりで管理している。就農以前は会社員だったという佐藤さん。
ワインづくりにチャレンジするに至った経緯や、ぶどうの栽培やボトルデザインのこだわりについてお話を伺った。

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エーデルワインへの納品から、独立まで。

佐藤さんが農園を借りてぶどう栽培をはじめたのは、2017年の春。今年で3年目になる。
「出身は花巻市ですが、就農する前は静岡で会社員をやっていました」
前職での海外赴任が、ワインづくりのきっかけになったという。
「仕事でしばらく海外いた時期があって、現地での休日の楽しみがぶどう園やワイナリー巡りでした。
日常のなかでワインに親しむ文化に惹かれて、ワインづくりへ憧れを抱くようになりました。」
日本に帰国してこれからのことを考えたときに「ものづくりに携わっていきたい」という強い思いがあったことから、農園でのぶどう栽培の実現に向けて動き出した佐藤さん。
グリーンツーリズムで訪れた大迫町でご縁に恵まれ、2016年、会社を退職し、花巻で新規就農することとなった。
はじめの1年間は地元のぶどう農家の方のもとで農作業やぶどう栽培について勉強し、2017年に現在の畑を借りて独立。 当初は育てたぶどうを老舗ワイナリー「エーデルワイン」に卸していたが、昨年からその一部を「高橋葡萄園」で委託醸造し、大迫佐藤葡萄園のワインとして今年から販売しはじめたのだとか。
現在佐藤さんが栽培しているのは、赤ワイン用のツヴァイゲルトレーベと、メルローという品種。昨年、白ワイン用の品種も植樹し、今後は白ワインづくりにも挑戦したいそうだ。
「願わくば、いつかは自分のワイナリーを持ちたいですね」と夢を語ってくれた。

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「おっ」と目を引くボトルを目指して。

佐藤さんのワインを目にしたら、誰もがきっと「かわいい」という印象を持つだろう。
ボトルのラベルには、ぶどうの実に囲まれて微笑むクマが、水彩タッチで描かれている。
愛らしく、温かい雰囲気を感じるラベルだ。ラベルのクマについて佐藤さんに尋ねると、「クマは我が家のマスコットなんです」と、少し気恥ずかしそうに教えてくれた。
「千葉県在住の”近藤朱さん”というデザイナーさんにデザインしてもらいました。これも不思議な縁で、近藤さんとはたまたまワインバーで知り合ったんです。話すうちに意気投合し、若くてバイタリティあふれる彼女にラベルデザインをお願いしようと思いました」と佐藤さん。
店頭に並んだときに目を引くデザインを、と依頼し、デザインは彼女に一任したという。
そんな思いの詰まった可愛らしいワインだが、その見た目とは対照的に、味は辛口の仕上がりだ。
甘いイメージのあるロゼも、大迫佐藤葡萄園では甘みを余さず発酵させ、果実味のある辛めの味わいになっている。
「わたしのワインの特徴は、無濾過であることです」ワインへのこだわりについて、佐藤さんはこう話す。
通常ワインづくりでは、フィルターを使って原液を濾過するという工程が入る。
しかし、佐藤さんはこの濾過という作業を行わず、ぶどう原液をそのままビン詰めしているのだ。
そうすることで、完成したワインには果実の風味がほのかに残り、濃厚なぶどうの味をダイレクトに感じることができるという。海外でつくられる赤ワインほど重みがないのも特徴で、天ぷらや、油を使った魚料理によく合うのだとか。
またぶどうの栽培において、育ちの良い粒に栄養が行き渡るように、ほかの粒を切り取る作業「間引き」には苦労が多いと語る佐藤さん。特に佐藤さんが栽培しているツヴァイゲルトレーベは難しい品種で、ぶどうの粒が、お互いに押し合うようにして房に成る。そのためそれぞれの果実に圧力がかかり、そこに雨が降ると、皮が破れて腐ってしまうのだ。それを防ぐためにも、粒の間引きは大切な作業。佐藤さんの農園では、枝一本に換算すると1房から1.3房くらいを目安にしているという。 「ぶどうが熟し始めてからは、ほとんどずっと間引きのことを考えています」と、佐藤さんは苦笑した。

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良いワインのために、良いぶどうを育てたい。

佐藤さんが、いつも心に留めている言葉がある。
「よいワインづくりは、ぶどう畑から始まっている」
卸先だったワイナリーの老舗、エーデルワインの方の言葉だ。
「これを常に念頭に置いて、健全なぶどうづくりに努めています。大迫は岩手県内でも特に寒暖差が激しく、ぶどうの栽培に適した土地。この環境を存分に活かして、質の高いぶどう、質の高いワインをつくりたいです」
大迫佐藤葡萄園のワインは、農業・漁業産品の通販サイト「ポケットマルシェ(https://poke-m.com/)」で購入が可能。また、今後販売するワインは、その年ごとにラベルのデザインを変えていく計画だ。
近いうちに実現するであろう、大迫佐藤葡萄園のワイナリー。
さまざまなラベルデザインのボトルが店頭に並ぶのが、いまからとても楽しみだ。