ここで造られるワインこそが、花巻の味。新進気鋭のワイナリー「亀ヶ森醸造所」

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「自然なワイン」を求めて立ち上がった、2人の農家。

亀ヶ森醸造所は、岩手県花巻市では3つめとなる小さなワイナリーだ。設立は2015年とまだ若い。
ブドウ農家の大和田さんと、リンゴ農家の高橋さんとの共同経営で、ワインのほか、リンゴを原料としたスパークリングワイン「シードル」を製造している。農家である2人が始めたワイナリーということで、造られるワインのおよそ9割は、高橋さんと大和田さんの農園で収穫されたブドウとリンゴが原料になっているという。
亀ヶ森醸造所の特徴は、栽培と醸造における「自然さ」。なるべく人の手を加えずに栽培・醸造されたワインは、素朴で野性味がありつつも、粗野ではない綺麗な味わいに仕上がっている。また、ブドウとリンゴを組み合わせて造ったコラボワインも開発しており、駆け出しながらも前衛的なワイナリーという印象を受ける。
今回は、そんな亀ヶ森醸造所の設立の経緯やワイン造りへのこだわりについてお話を伺った。

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地域のひとびとの寄付からはじまった醸造所。

亀ヶ森醸造所の設立は、2015年7月31日。
醸造所は、大工さんと協力して民家を改造し、機材は譲り受けるなどして、みずからの手で造られたものだ。
しかし、醸造所が建ったからといって、すぐにワインづくりが始められるわけではない。
ワインの醸造には、まず、税務署から交付される「酒造免許」の取得が必須となる。さらに、1年あたり約8000本のワイン(750mℓビンで換算)をつくり、販売することが条件なのだ。立ち上がったばかりの小さなワイナリーにとって、この条件はかんたんにクリアできるものではなく、達成のためには運転資金が必要だった。そこで2人は、2016年6月に酒造免許を取得後、資金調達のためのクラウドファンディングに乗り出した。岩手県に特化したクラウドファンディングサイトで、花巻市の活性化に貢献したい思いと、ワイン造りへの情熱を綴り、プロジェクトへの協力を呼びかけた。また、協力者への謝礼として、「ゼロ号」と名付けられた、本来ならば市場に出さない試験醸造酒の配送を決定した。
プロジェクト開始から2ヶ月後、2人の熱意とたくさんの人の協力の甲斐あって、クラウドファンディングは無事に目標金額を達成。「ゼロ号」はプロジェクトのすべての支援者に配送され、高い評価を受けた。そしてその年の秋、正規の販売としては初の「初号」の販売で、亀ヶ森醸造所はワイナリーとしてのスタートを切ることとなった。

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亀ヶ森醸造所 | 大和田 博 様

植物の自然な状態を、そのままワインへ。

「これからも、もっと”自然な”ワインを追求していきたい。だから、ワインの醸造だけじゃなくて、原料の栽培からこだわっているんです。」ワイン造りについて、大和田さんはこう話す。化学や機械の力でなく、植物の持つ自然の力を活かしたワインを造っていきたいのだという。そのため、大和田さん・高橋さんが育てるブドウやリンゴには、除草剤や化学肥料が使われていない。また収穫後のワイン醸造段階でも、補糖・補酸といった加工はおこなわないそうだ。
「除草剤は土壌環境を悪くするため使っていません。なるべく、植物にとっていい状態を保ってあげたい。化学肥料が悪いとは思っていないけど、きちんと扱うのは難しいから。化学肥料って栄養ドリンクみたいなもので、適宜、少量ずつ与えるのがいいんだけれど、それって簡単じゃないんです。だから、普段の食事(堆肥)でバランスよく育てていくことを第一にしています。」と大和田さん。二人の、”自然”ということへのこだわりが伺える。
また、大迫町でワイナリーを営むことについては、「ワインなら岩手」という産地の確立を目指していきたいのだそう。
今も停滞が進んでいる農産業。ワイン造りという、岩手県東部の特殊な地質を利用した取り組みによって、地域産業が少しでも活性化することを期待したい。

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花巻ならではの自然環境が、大きな個性に。

ワイン界の専門用語のひとつに「テロワール」という言葉がある。
「ブドウを取り巻くすべての環境の特徴」というのが、日本語の表現で一番近しい説明だ。
場所、気候、土壌、ときには造り手もその要素として数えられることがあり、こうした環境によって、ワインの個性や味わいが大きく変わるという概念のもとに生まれた言葉である。亀ヶ森醸造所が追求する自然さはまさに、岩手県花巻市の「テロワール」を最大限に引き出す醸造法ではないだろうか。彼らと、彼らの造るワインの今後の活躍が、花巻=ワインの町というイメージ定着の大きな一歩となりそうだ。

亀ヶ森醸造所のワインは、岩手県内の酒店、そのオンラインショップで購入できる。また、8/31-9/1に開催される「ワインツーリズム」ほか、東北〜関東圏のワインイベントにも参加予定。
どこかで亀ヶ森醸造所のワインに出会った際には、ぜひその独特の味わいを堪能していただきたい。