栽培をITシステムで完全管理。「ITトマト」の生産事業ネクスファームを運営するネクスグループ

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通信機器メーカーから、最先端農業へ。

農業の業界でもこのごろ耳にする機会の増えた「AgriTech(アグリテック)」という言葉。
農業とテクノロジーを組み合わせることで、生産の安定化や、人手不足の解消、地産地消の促進を目指そうという考え方が、国内ですこしずつ浸透してきているようだ。
ここ花巻市にも、東北の農作物を活性化させようと立ち上がった「野菜を育てるITの会社」が存在する。
長年メインとしてきた事業を農業に活用、ネクスファームとして農業事業を立ち上げてして作った、「ITトマト」を販売する「株式会社ネクスグループ」だ。
畑を必要としない「多段式ポット」という栽培法を採用し、ITの技術で温度や湿度、日射量などをモニタリングしながらハウス内の設備を自動制御することで環境を調整。これによりトマトが本来持っている生命力が最大限に引き出され、栄養価・糖度ともに最適な状態で収穫できるのだという。
通信機器メーカーであったネクスグループが、なぜ農業という未知の分野に踏み出したのか、そのきっかけや、栽培へのこだわりについてお話を伺った。

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野菜の育ちにくい東北に、新たな可能性を。

ネクスグループでITトマトの栽培がはじまったのは2012年。 ITに新たな価値を、技術の革新を!という時流の最中だった。通信技術のノウハウはある、それをどの分野に活かせるか、という議論がネクスグループ社内でも挙げられており、そこにひとりの社員が「ITで農業にチャレンジしてみるのはどうか?」と持ちかけたことがきっかけだったという。
「岩手は冬の寒さが厳しいので、おいしいお米はできても、野菜などの農作物はなかなか上手くいかないんです。
この点に目をつけて、システムでの栽培に挑戦しようということになりました」と話すのは、株式会社ネクスグループ、代表取締役社長の秋山さん。
スタート1年目は、ピーマン、ナス、トマトの栽培に挑戦。
東京にあるシステム開発のグループ会社と一緒に、通信技術を利用してハウス内の環境を整備する「農業ICT」システムを独自開発した。ITには精通していても、農業に関しては知見のなかったネクスグループ。1年目のピーマンとナスの栽培は、成功とは言えなかったそうだ。
そこで2年目以降は、前年しっかりと成長したトマトに注力し、大きさや色のバリエーションを増やして栽培することに。独自開発のシステムも味方して、今日までの安定的で質の高い生産につながっている。

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株式会社ネクスグループ | 秋山 司 様

栽培技術で、ほおずきにもチャレンジ。

ネクスグループでは、畑ではなくビニールハウスで、苗ひとつひとつを鉢(ポット)に植えて育てるポット栽培を採用している。ITシステムを活用し、ビニールハウス内の温度、湿度のほか、二酸化炭素量、土の温度や水分量までも、データとしてモニタリングできるのだとか。この技術をさらに発展させ、ハウス内の環境を最適なバランスに保つシステムも備わっているという。
「栽培に使う用土にも、ITで一工夫してあります」と秋山さん。
ネクスグループではまず、トマトの初期成長に必要な量の栄養素が含まれた用土で苗を育てる。
成長過程でトマトが本格的に成長が進み、実をつけ始めると、その下に2つめのポットを置くが(多段化)、2つめのポットには1つめとは異なる美味しい実ができるような適切な肥料設計がなされているのだそう。
これらをすべてデジタル化し、徹底した土壌のマネジメントをおこなうことで、高い品質のトマトの栽培が可能になるのだ。
トマトの糖度(甘さの指標となる値)は、一般的なもので6~7、8を超えると「フルーツトマト」というジャンルに分類されるが、ネクスファームが栽培するトマトの糖度は、なんと10〜11。長年培ってきたIT技術の賜である。
ちなみに、ITトマトという名前ついて訪ねたところ「あんまり食べ物っぽくないですよね」と苦笑が返ってきた。
いわゆるおいしそうな名前をつけるよりも、ITで作ってもちゃんと美味しい野菜ができるということを伝えるために、あえてこの名前をつけたのだそう。 ITを使わない農家ではぜったいにつけられない名前だが、だからこそ「どういうこと?」と興味をひかれる、おもしろいネーミングではないだろうか。
また、新しい商品として近年力を入れているのが、「フルーツほおずき」だ。
ほかの農家であまり育てられていない作物に挑戦したいという考えから、栽培が始まったのだとか。イノシトールという、脳の機能にはたらく栄養成分のほか、ビタミンや鉄分も豊富に含まれており、チアシードなどとおなじスーパーフードとして注目されているほおずき。
実がガクに包まれているという可愛らしい見た目もあいまって、料亭などで出される和食に花を添える食材としても人気が高まっているのだそう。

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農業とITは、手を取りあえる。

人の手がかかった、質の高いものへの価値があらためて見直されている昨今。
モノであれ食材であれ、「いいもの」に仕上げたいというつくり手の思いは皆おなじであるはずだ。
しかし、それをやり遂げるのは簡単ではなく、こと農業に関しては、事業者の高齢化や人手不足、輸入問題など、「いいものをつくり続けること」への壁は高い。
だからこそ、東北地方でいちはやく農業にITを取り入れたネクスグループには、この農業の苦しい現状に一石を投じる可能性を感じずにはいられない。
農業ICTは、花巻の、岩手の農業従事者にどのように映るだろうか、どのような影響をもたらすだろうか。
ネクスグループの運営する新規事業ネクスファームの今後の活躍に期待したい。
ITトマトやフルーツほおずきをはじめとしたネクスファームの商品は、花巻市内の産地直売所や道の駅、オンラインストアで購入できる。
また、おくりものには、ITトマトを原料としてつくられたトマトジュースやラスク、トマトのキーマカレーなどもおすすめだ。IT技術を駆使した先端農業で作ったトマト、まずは1パック、味見をしてみては。