おかげさまで、完売です。地酒シードルの夢を叶えた「もんのすけ農園」

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女性に嬉しい、贅沢な甘みの国産シードル。

2019年3月、「もんのすけ農園」を運営する菅原徳悟さんの夢が実現した。
はじめて発売した、350本限定の自作シードルが見事に完売したのだ。
シードルとは、特にヨーロッパで古くから親しまれている、りんごを原料としたスパークリングワインのこと。
そして花巻で、ふじりんごを使ったシードルを販売しているのが「もんのすけ農園」だ。
日本でりんごの産地といえば、多くの人が東北をイメージするだろう。なかでも、もんのすけ農場のシードルに使われる「秋田ふじ」は、今では岩手で栽培する農家の少ない、珍しい品種。色づきは薄いが、強い甘みが特徴だ。
そんな秋田ふじを原料につくられたもんのすけ農園のシードルは、その飲みやすさから、お酒の苦手な女性でも楽しめると評判を集めている。実は、数年前に就農したばかりだという菅原さん。
なにをきっかけに就農し、どのようにしてりんごを育てているのだろうか。

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生まれ育った土地のお酒をつくりたい。

「もともとは、福祉の仕事をしていたんです」
就農のきっかけについて、そう話しはじめた菅原さん。
元々は実家が水稲の兼業農家で、子供の頃から農繁期には作業を手伝っていた。以前からワインやシードルを好んで飲んでいたこともあり、仕事の傍ら「いつかは、自分が生まれ育った土地で栽培した果実をお酒にしたい」という想いを心に抱いていたという。そして、農業への想いを募らせていた3年前。菅原さんは、農地を手放そうとしている農家の方に、農地を引き継がないかと話をもちかけられる。
「畑をやってくれる人がいなかったら、この木を切るらしい」
菅原さんは就農を決意。またちょうどその年に、花巻市がワイン・シードル特区に認定され、2017年、念願の「もんのすけ農園」を設立し、長年の夢に向かって一歩を踏み出したのだった。
ところで、農園についた「もんのすけ」という名称。ここにも、菅原さんの想いのこもった由来がある。
「もんのすけ」は、菅原さんの実家の屋号の名前だ。現在は互いの家を屋号で呼ぶ習慣もなくなってきているが、「もんのすけ」という屋号の歴史を大切にしたい。この場所、この家で、お酒をつくっていきたい。そんな想いから、屋号の名前を農園につけたのだとか。ふるさとへの愛が感じられる、素敵なネーミングだ。
こうして幸先よくスタートした「もんのすけ農園」だが、やはりはじめは大変なことも多かったという。
実際に、りんごの栽培で苦労したことを伺ってみた。

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もんのすけ農園|菅原 徳悟 様

初年度で実感した、農業の厳しさ。

「りんごの収穫までの作業をすべて一人でこなすのは、はじめてりんごづくりに挑戦する身としてはとても大変でした」と、菅原さんは振り返る。りんご栽培において、1年の作業の流れは決まっている。
色づきのよい良質なりんごをつくるためには、各作業の「時期を見ること」がとても大切なのだとか。
「いまはちょうど摘果の時期なのですが、この作業が少しでも遅れると、実が大きく育たたなくなります。
しかも、そのミスは次年度の栽培にも影響してしまうんです」と菅原さん。
ひとつのつぼみから咲く5〜6個の花のうち、果形のよくなる中心花を選定して、ほかの実を摘み取ることを摘果という。
養分の浪費を防ぐために大切な作業だ。摘果作業は数人で3,4日かけておこなうのが通常だが、菅原さんは30aもの土地の摘果を、ひとりで行わなければならなかった。それに加えて、初めてのりんご栽培、これで本当に実が成ってくれるのかという不安も多かったという。
自作のシードルが初年度で350本完売、という華々しい成功譚の裏には、菅原さんの並々ならぬ努力が隠れていたのだった。
また「自然災害に影響されるのも農業の難しいところ」と、菅原さんは話す。
2017年、スタートしたばかりのもんのすけ農園を強大な台風が襲ったことで、全収穫量の2割ものりんごが落果してしまったそうだ。自然災害による被害に為す術なしという状況を目の当たりにしたものの「改めて農業の大変さを覚悟することができました」と、前向きな菅原さん。手探りの農作業、台風被害を乗り越え、無事に収穫が終わったときの安堵と喜びはひとしおだったという。

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もっと美味しく、もっとたくさん。今後の活躍に期待。

りんご農家としては駆け出しの菅原さんだが、今後の目標は「シードルの生産量を増やして、さらに醸造用のぶどうも新植したい」とのこと。現在、収穫したりんごのうちシードルの原料として使われるのは2割ほどのため、この割合をもっと増やしていく予定だ。
初年度で350本を完売させた、もんのすけ農園のシードル。
これからどんどん積み上げられていくであろう菅原さんの経験と勘が、もんのすけ農園のシードルをもっと美味しく、洗練された味に仕上げていくだろう。
次年度のシードルが店頭に並ぶのが、いまからとても楽しみだ。